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その年読んだ本のベストテンです。

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その年に読んだ本ベストテン

2002に読んだ本ベストテン

1 『流星ワゴン』
重松清 講談社 【現代社会小説】

流星ワゴン
流星ワゴン
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重松 清
講談社
売り上げランキング: 332,933
キーワード:家族、親子、夫婦、人生、岐路、生命、生死 (@_@)/読みながら、何度も涙が流れた。 人生は順風満帆とはいかない。もう死んだ方がましだと思うことだってある。 ――それでも、人は、生きていくんである。いろんなことを抱えながら、いろんなことを乗り越えて。 暗く重いテーマであるし、じっくりと書いてあるのにへこまず読めるのは著者の視線があたたかく、「人間」への愛情が感じられるからだろう。 読後、しみじみとしたパワー、エネルギーを与えられたと思った。


2 『ヴィラ・マグノリアの殺人』 
若竹七海 光文社文庫 【コージーミステリー】

ヴィラ・マグノリアの殺人 (光文社文庫)
若竹 七海
光文社
売り上げランキング: 325,293
キーワード:ユーモア、ご近所、どたばた、ブラックユーモア (@_@)/もう、最初から最後までうれしくって楽しくって、どうしてこんな魅力的な人々・設定を書いてくれちゃうのという感じ。 町の描写、そこに住む人々がとてもいきいきと描かれ、くすりと笑ったり、あるある、とうなずいたり、「生活」が伝わってくるおもしろさ。 しかもしっかりミステリー、謎ときとラストへ向かうサスペンスの醍醐味も味わえる。万歳三唱。


3 『世界音痴』
 穂村弘 小学館 【エッセイ・短歌】

世界音痴
世界音痴
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穂村 弘
小学館
売り上げランキング: 142,141
キーワード:変人、生き方 (@_@)/誤解を招くかもしれないが、この本を読んで「ああ、私も自分の思うままに生きていていいんだ」ととても安心できた。 奇想天外な(?)著者の思考回路、生き方は読んでいてとても面白い。ここまで自分をさらけだして平気なのかとも思う。 この人と結婚したいとは思わないけど、友人として話し合ったらとても興味深いだろう。


4 『うたう槇原敬之』
 小貫信昭 ソニー・マガジンズ 【ルポタージュ】

うたう槇原敬之
うたう槇原敬之
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小貫 信昭
ソニーマガジンズ
売り上げランキング: 306,238
キーワード:音楽、楽曲作り、生き方 (@_@)/麻薬事件で活動休止、そして新たに音楽を作り始めた槇原を、知人である著者がルポし、描く。 人生論やしめっぽい反省論にならず、あくまでも過去にきっちり区切りをつけ、ひたすら楽曲作りに真剣に取り組み、しかも楽しむ槇原の生き方は意外であったがある種の強さを感じさせた。 ひとつの曲ができていくということはどういうことか、じっくりと見せてもらえ、槇原の音楽観にあらためて「このひと好きだな」と思わされた一冊。


5 『黄金を抱いて翔べ』
 高村薫 新潮文庫 【現代社会派小説】

黄金を抱いて翔べ (新潮文庫)
高村 薫
新潮社
売り上げランキング: 24,484
キーワード:犯罪、強奪、金融、社会システム (@_@)/大阪のキタ・梅田~淀屋橋あたりが舞台。なんと銀行の金庫から金塊を盗んでしまおうという男達の話。 これを実にリアルに、緻密に、じっくり腰を落ち着けて書いてある。そこには絵空事の怪盗もののようなぶっとんだストーリーも、あるいは体制に反抗するドン・キホーテのような諧謔もない。 あくまでも、現実的に書かれる金塊強奪事件。その面白さに、息を呑み、手に汗握ってひたすらページを繰った。 犯罪に関わる男達それぞれの生き様も非常に興味深い。


6 『百鬼園随筆』『続百鬼園随筆』
 内田百 新潮文庫 【随筆・短篇小説】

百鬼園随筆 (新潮文庫)
百鬼園随筆 (新潮文庫)
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内田 百けん
新潮社
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続百鬼園随筆 (新潮文庫)
内田 百けん
新潮社
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キーワード:大正昭和世相、ユーモア、夢うつつ (@_@)/漠然といだいていた文学史にも出てくるこの著者のイメージをはるかに越え、ぶっとぶばかりの面白さであることに触れるきっかけとなった二冊。 古き正しき日本語で書かれた絶妙の文章にはただただ驚愕し、喜びにうちふるえつつじっくりひたる。そして時折がまんならず吹き出し、呵呵とわらう。 ほぼ同時に並行して読んだのでまとめて6位。


7 『無境界の人』
森巣 博 集英社文庫 【エッセイ?小説?】

無境界の人 (集英社文庫)
森巣 博
集英社
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キーワード:ギャンブル、思想、ワールドワイド (@_@)/この著者はギャンブラーなのでそういう話ばかりかと思いきや、国家や体制をはじめ様々な事象についてまあ語る、語る。 断固たる「森巣持論」があり、それをこれでもかとばかり蕩々と並べ立ててくれちゃうんである。しかも割とカゲキに、自身の体験等と合わせ技でもって。 世界のあちこちをギャンブル(つまり己の運と才覚)でもって渡り歩き、それで生活している人であるから、人生をそのまま書いたっておもしろくってそこらの小説顔負けだ。 こんな人もいるんだなあ~、そういう考え方もあるんだなあ~、と驚きつつ楽しんだのであった。


8 『パレード』
 吉田修一 幻冬舎 【現代純文学】

パレード
パレード
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吉田 修一
幻冬舎
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キーワード:チャットのような同居、若者 (@_@)/これは10年前には決して書かれなかった小説のような気がする。 それくらい、まさに、いま、この時代ならではの若者の生活とか考え方とか人とのつきあいかたが見事にえがかれていると思う。 この人の文章の言葉の選び方とかも好きだ。 ふっと読んで、思わずもういちど目でなぞり直し、すげえなあ、と思う。 最終章がいちばん良くて、というかこれがなければベストには入れなかったと思うのだが、とにかく読後イロイロ考えてしまった。書かれていないストーリーを想像してしまう、遡って想像させられる。 芥川賞はこの次の『パークライフ』で受賞したみたいだけど、私はこっちの衝撃が強かったな。


9 『春になったら莓を摘みに』
  梨木香歩 新潮社 【エッセイ】

春になったら莓を摘みに
梨木 香歩
新潮社
売り上げランキング: 421,414
キーワード:英国での暮らし、生き方、人々 (@_@)/梨木さんの初エッセイ。 英国で関わった人のことを書いてある。それから日々考えたことなども。 とりあえず淡々としたものを想定して読み始め、冒頭のリスの描写で恋に落ち、これはこれは、という感じで読み進んだ。 なにがどう、ということはないけれども面白い。 考え方とか、視点の当て方とか、そしてこの人が書いた小説を思い出したりして。着々と、確実に。質実剛健ってこういうの? この本の装丁がすごく好きです。


10 『ミスター・ヴァーティゴ』 
 ポール・オースター 新潮社 【現代英米文学 SFファンタジー?】

ミスター・ヴァーティゴ
ポール オースター
新潮社
売り上げランキング: 311,696
キーワード:愛、空を飛ぶ、アメリカ、サーカス、少年、不思議 (@_@)/オースターがファンタジーを書くとどうなるかという。 その解答は、「こどもは大人の未成熟なものという考え方はまちがいである」。 ヒトコトでいうと、「ナメんなよ」なのだが。 ストーリーはある少年が空を飛ぶ方法を凄まじい訓練の結果学びとり、それでサーカスとして各地を回る、というものなのだが。 それから想像する夢や魔法や希望というものはあんまり実は描かれなくって、とりあえず「死に物狂い」の努力の日々である。 そして、そんな感じで描かれていく物語なのに、読後、深い深い人間愛あるいは親子愛のようなものを感じ、なんだか心にせまるという。 これが、オースターの魔法なのかしらん?


番外 『亡国のイージス』 

 福井晴敏 講談社文庫 【現代社会派国際小説】

亡国のイージス 上 (講談社文庫)
福井 晴敏
講談社
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キーワード:ハイテク時代の戦争、自衛隊、日米韓、北朝鮮 (@_@)/読む前の知識で自衛隊とかそういう世界を書いた小説だとは知っていて、それでやたらタカっぽい思想が語られたり、ふぬけた日本を叩くような主張がなされているのかなと敬遠していた。 しかしある人の絶賛を受けて読んでみたところがまったく逆の発想で書かれた小説であったのだ。 戦うことよりも戦わないでいることの難しさ、そしてその大切さ。 しみじみと、感じる。 小説としても「後半のとんでもない背負い投げ」がもう見事で、あとは何がきてもボウゼンとして読み進むしかないというか(白紙状態で読みたい方は「 」内注意)。男の生き様とかだけでも読む価値アリかも。


振り返って・・・
毎度お断りするがこのベストはあくまで個人の独断と偏見に基づくものである。
 ざっくりと振り返ると年末の奥田英朗『邪魔』、それから高村薫の世界に踏み込み、そうそう今年はS・J・ローザンの新作が出たんだったとか、ローレンス・ブロックをやたら読んだんだとか、最近はジル・チャーチルを楽しんだなとか。内田百に親しんだ年でもあったし、そう、浅田次郎『きんぴか』でアレルギー克服して読み始めたのも今年のことであったのだ。 つい最近のことのようであり、かなり前のことのような気もする。 まあそんなことを思いながら、今年もベストを作った。

 池永陽『コンビニ・ララバイ』はどうしたんだ、とおっしゃる向きがあるかもしれない。そう、7月24日の日記で私は書いている、「これはベストワン候補がきたなあ」と。 確かに候補だったんである。しかし実はこの小説には致命的な欠陥があった。読了直後の興奮状態では気にならなかったそれが、時間を経るごとにささくれだってきたんである。そこへ、まさに彗星のごとく重松清『流星ワゴン』の登場。 『コンビニ』の長所であった「生きるパワーを与えてくれる」という点ひとつとってもはるかに凌ぐ大傑作。カーン!という感じで『コンビニ』は場外へ飛ばされ、お空の星と消えたのであった。合掌。

 今年のベストは4位まではスラスラと決まり、あとは順位を決めるのにかなり迷った。別に入れ替わってもかまわない。というわけで5位~番外の順位にそう深い意味はない。私の感覚だけである。 「番外」というのも苦し紛れで、「そうだ、これは自分で選んだんじゃないから別格扱いにすれば順位確定するなあ」という次第である。 読了直後の感想日記と今回書き下ろした推薦文との違いを楽しんでもらってもいいかもしれない。
 なお、『コンビニ』の欠陥とは何か、蛇足ながら書き添えておくとこれは女性の思考の描き方である。あまりにも男性のご都合というか夢というか、それを特定登場人物の性質として描くならかまわないのだが、「女とは……である」式の一般化した記述があり、ちょっといただけなかった。 我思うことすなわち世の常識である、っていうのは余程気を付けて書かないとね。