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その年読んだ本のベストテンです。

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その年に読んだ本ベストテン

2005に読んだ本ベストテン

1 「最後の息子」 ※『最後の息子』収録短篇
 吉田修一 文春文庫 【現代文学】

最後の息子 (文春文庫)
最後の息子 (文春文庫)
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吉田 修一
文藝春秋
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なにがそんなに、 と自分でもわからなかったけど「死ぬほど」面白かった。 そんな陳腐な言い回ししか考えつかないのがもどかしかった。
 日記より】 舞台はたぶん新宿歌舞伎町。オカマの閻魔ちゃんと同棲している、というかもっと正確に言うと「ヒモ」になっているのが主人公の青年。何をするでもなく、ホッチキスの針をずっと飛ばし続けたりしている毎日。焦燥がまったく無いわけでもないが、かといって「若さ」とか「情熱」も発揮していない。どこか醒めたような視点は、周囲だけでなく、自分にも向けている。閻魔ちゃんが購入したビデオに、日記代わりに「日常」を撮っていく「ぼく」。 
 

2 『オーデュボンの祈り』
  伊坂幸太郎 新潮文庫 【ミステリー?ファンタジー?SF?】

オーデュボンの祈り (新潮文庫)
伊坂 幸太郎
新潮社
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どう転がるかわからない、ワクワク感が素晴らしい。 「ものがたり」の原点。 これが私の読みたかったお話。
 日記より】 読んでいる最中もそうだったが、読み終わったあとに不思議な暖かさが胸にあふれてくるというか、なんだか切ないような、哀しいような、不思議な小説だった。それは、優午というカカシへの、愛おしさとも言える。生きとし生けるものの愛おしさ、それを無残に踏みにじってこの世界に君臨している”人間”という生き物への複雑な自省みたいな感情にも襲われる。
 

3 『日暮らし』
 宮部みゆき 講談社 【時代小説・捕物】

日暮らし 上
日暮らし 上
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宮部 みゆき
講談社
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この幸せな、読んでいるだけでじわあっと心に染み渡る人情はやっぱり譲れない。「ぼんくら」シリーズ待望の第2弾。
 日記より】 弓之助ちゃん大活躍!主役を食っています(笑)。大の大人数人を巧みな話術で転がすわ、実際に大男を投げ飛ばしてしまうわ、鋭い洞察は冴えまくるわ。 末恐ろしい、坊っちゃんです。 どうやらこの感じだとシリーズはまだまだ続くようですね。楽しみ。
 

4 『わが王国は霊柩車』
クレイグ・ライス ハヤカワ・ポケット・ミステリ 【ミステリー/ユーモア】

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クレイグ・ライス
早川書房
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災いがふりかかってきて大変、というミステリーには枚挙にいとまが無いが、彼らは厄介ごとに突っ込んでいくだけでは飽き足りず、自らが事件を起こす。 何考えてんねん。
 日記より】 ショッキングな幕開け。ある人物の元に超高級手袋が送られてくるんだけど、なんと、その手袋には「中身」も入っていた。綺麗に防腐措置がなされた人間の切断された手首から先が……( ̄□ ̄;)! 例によってマローンはお金のやりくりに困ってるし、ジェイクはテレビプロデューサーとして成功するために問題を抱えてるし、ヘレンはどんな苦境に立とうとも美しく、上品で、最強なのだ。
 

5 『沼地のある森を抜けて』
梨木香歩 新潮社 【純文学・SF?】

沼地のある森を抜けて
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梨木 香歩
新潮社
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惚れ直した。 なんとも奇妙な、そして壮大な、生命の神秘すら感じさせる不思議。 「ぬかづけ」で「文学」なのだ!
日記より】 梨木さんの書く小説の主人公は割とクール(冷静沈着、理性的)だと思うけど、この話の久美さんもそう。話の主軸となる思考の元がしっかり根を張って立っている人間だからこそ、周囲で起こる「不思議」「怪異」もなんだか淡々と、静かに、でもしっかりとこちらに染み込んでくる気がする。ひたひたと。
 

6 『サウスバウンド』
奥田英朗 角川書店 【エンタメ・現代】

サウス・バウンド
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奥田 英朗
角川書店
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暗い暗いお話を書くのが上手な奥田英朗が贈る最上級のエンタメ。 あの快感は忘れません。
日記より】 主人公は小学6年生の「次郎」。そのお父さんの名前は「一郎」。 昔、過激派をやっていた。それだけならあの時代には珍しくなかったことなんだろうけど、一郎が変わっているのは彼が今も「戦う人」であることだ。もちろん、相手は、「国家権力」。 ハタでみていれば興味深い人物かもしれないが、これが父親となると、なかなか大変だ。っていうか、うんざりしたり迷惑だったりするのだ。
 

7 『いつかパラソルの下で』
 森絵都 角川書店 【現代】

いつかパラソルの下で
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森 絵都
角川書店
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大袈裟な表現はなく、淡々と、でもどこかしっとりと染みわたる、極上の逸品。 オトナの世界です。  
日記より】 「ハートウォーミング」という安っぽい、使い古された言葉でこの小説を評するのはいかがなものか。そこから想定されるような「甘さ」はなく、でもまったく「御伽噺」的要素がないわけでもなく、――とりあえず読み終えたとき、「あー」と何か生きていることについてあれこれ考えてしまうような、ちょっと前向きのパワーをもらえたような、そんな気持ちになれる作品である。
 

8 『桃色トワイライト』
三浦しをん 太田出版 【エッセイ】

桃色トワイライト
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三浦 しをん
太田出版
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単にネタがオタクでぶっちゃけてるから面白いだけでしょ、と思っているそこのあーた! それはハゲしく違うですぞ。
 日記より】 帰りの電車内で読みましたが、笑いを堪えるのに必死だったぞ。明らかに危険なのは飛ばして家で読むことにしたぞ(笑)。 それにしても「オダジョーが好きだから”新選組!”を観た」んじゃなく「”新選組!”を観てオダジョーにはまった」んだったのね。
 

9 『ネクロポリス』 
 恩田陸 朝日新聞社 【SF・ファンタジー・ミステリー?】

ネクロポリス 上
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恩田 陸
朝日新聞社
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この著者はいろんなジャンルの作品を書くけど、要するに、恩田陸の真骨頂っていうのはこういう作品のことなのだ。
 日記より】 これはパラレル小説の一種。主人公ジュンイチロウ(通称ジュン)が暮らす世界にはファーイースト・ヴィクトリア・アイランズ、通称「V.ファー」という国(島)があって、そこには「アナザー・ヒル」と呼ばれる場所がある。川と運河を経て辿り着くそこは”死者の帰って来る場所”。死者と生者が区別できないような形で出会い、言葉を交わせる場所なのだ。
 

10 『金毘羅』 
  笙野頼子 集英社 【純文学】

金毘羅
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笙野 頼子
集英社
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なんてゆうかまあ、いろんないみで勉強になりました。 毒気もあるんである程度キョリを保ちたい作家さんだが、知ることができてよかった。
 日記より】 どうもこの小説における「金毘羅」っていうのは四国のこんぴらさんを踏まえていて、関係はあるみたいなんだけどでも「同じ」じゃなくて、あくまでもこの小説世界における著者によって創造された存在、みたいなんだけど。だって「金毘羅」がいっぱい存在することになってるし。っていうかそういう宗教学的な歴史上の事実とか日本書紀とか古事記とかそのへんの絡みを踏まえてそれらを著者流にアレンジして時々創造もプラスして語られていくのがこの小説、のようだ。
 

特別賞 『DEATHNOTE デスノート』
小畑健(原作:大場つぐみ) 集英社ジャンプコミックス 【コミック】

DEATH NOTE (5) (ジャンプ・コミックス)
大場 つぐみ 小畑 健
集英社
頭の中は「り・う・ざ・き」で埋まっています。今もね。何が起ころうともね。ええ……。
【日記より】 この話は、そこに本名を書いて顔をしっかり見ることができさえすれば該当者をほぼ意のままに殺せる「デスノート」なる死神のアイテムをめぐる人間界の騒動を描いたサスペンスです。 主人公の夜神月君がすごくルックスが良くて頭も抜群で一見正義感の強いサワヤカ少年なんだけど実はちょっと性格が「イってる」ところが面白い。で、本来人間が持つものではない力を手に入れたがためにその偏りがどんどん強くなっていく。 
 

振り返って…

 伊坂幸太郎を読んだのがすべて2005年の話だなんて、信じられません。
 しかし確かに、初めて氏の作品を読んだのは4月、『アヒルと鴨のコインロッカー』であり、その際私は伊坂ワールドにのめりこめず、消化不良からくるいささかの欲求不満を表明したのでありました。 そして次に彼の作家の作品に手をのばすときにこの事実が少しも緊張感を抱かせなかった、といえば嘘になります。各方面で絶賛を受けているこの著作家をワタクシの偏った感性が受け付けないという事実が確定するということは、現代文学がもたらす享楽の一つを諦めざるを得ない、という現実に同じだからであります。 しかし、有難いことにそれは杞憂に過ぎませんでした。次に読んだ『チルドレン』でわたくしのハートは「陣内」によってがっちりつかまれ、鷲掴みにされ、あっぱれ伊坂幸太郎はマイ・脳内でブレイクしたのであります。

 これにつきましては世間の評価いうものからいささか時間的に隔たりすぎているのではないかとか、読書愛好家を名乗っているにしては適期を逸するにあまりあるのではないか、とのそしりを免れないこととと存じます。しかしくだけた表現をお許しいただけるならば「なんでか知らんけどそういう巡りあわせにしかなっていなかった」ので仕方ないのであります。
そのようにして瞬間沸騰的に氏の著作を読んでまいりました身には、ここ数作に見受けられる明らかなある種の「方向転換」にいささかの戸惑いをおぼえずにはいられないのであります。 2006年の伊坂幸太郎からも目が離せないこと、必至なのでございます。

残念ながら10位までに収めることが適いませんでしたが印象深かった作品として、他に糸井重里&池谷裕二『海馬』、種村季弘『雨の日はソファで散歩』を挙げておきたく、以上をもちましてコメントとさせていただきます。 なお、この一文が現在熱烈読書中のP・G・ウッドハウスの世界から影響を受けていることは明白であり、2006年度のベストテンに氏の著作がランクインすることは間違いないことでございましょう。