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その年読んだ本のベストテンです。

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その年に読んだ本ベストテン

2006に読んだ本ベストテン

1 『風が強く吹いている』
  三浦しをん 新潮社 【エンタメ】

風が強く吹いている
風が強く吹いている
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三浦 しをん
新潮社
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なんていうか……リアリティとかいう意味でいうと激しく「甘いわっっっ」な作品なのかもしれないんですよ。でも、「現実を描写する」ことは別に小説じゃなくていいんです。 私は小説に夢を、スリルを、希望を、楽しさを、感動を、勇気を、萌えを、……そのほかにもいろいろと……期待している。 そのほとんどを最高のカタチで与えてくれたのが本書でした。 どうもありがとう。
 日記より】 駅伝に興味はないけれど、スポ根も苦手だけれど、そんなことは無関係だった。だいたいこれはスポ根じゃない。読み進めばわかる、筆者がいつも何を言ってきたか。どういうスタンスの持ち主か。何を書こうと、貫かれるまっすぐな意見は変わらない。美しく、力のある文章で私の心をぐいぐい掴んで離さないのだ。 読み終えてしばらくしても感動のあまり言葉に表すにはどうしたらいいのかとボウゼンとするしかなかった。
 

2 『河岸忘日抄』
堀江敏幸 新潮社 【現代文学】

河岸忘日抄
河岸忘日抄
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堀江 敏幸
新潮社
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読んでいる最中私は幸福でした。 ものすごく精神的に贅沢を味わえました。 知的で、大人で、落ち着いた空気。 なんだか著者がそこに実際にいたことがあるように感じましたけど、あとで調べたらこれは完全に頭の中だけで作られたお話だということです。 日々の流れていく感じとかすごく好きでした。
日記より】 「少しばかり働きすぎた」のでちょっと人生の小休止をしている「彼」。狭い仮の宿で世俗から離れた生活をひとりで送る、レコードと小説に囲まれて。ちょっと羨ましいシチュエーションだなあ。 作中で「彼」自身が『徒然草』の隠遁生活をはじめとするいろいろな小説の主人公の「人生」と己の立場について比較考察してあれこれ思い煩うのが大変興味深い。また、日本にいる知人・枕木さんとのファックスや手紙でのやりとりも静かで大人の対話で味わい深い。
 

3 『日の名残り』
 カズオ・イシグロ ハヤカワepi文庫 【英国現代文学】

日の名残り (ハヤカワepi文庫)
カズオ イシグロ
早川書房
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2006年、カズオ・イシグロの『わたしを離さないで』がベストセラーになりました。話題に釣られて私も初めて著者の世界に触れ、感銘を受けました。 が、とりあえず数点読んだ時点でむしろ好きだったのはこちら。 なんていうか、いろんな点で無理がなくて、ストレートで美しくて、しみじみと切なくなる慎ましやかさが胸に沁みるのです。 というわけで。
 日記より】 執事が主役の話というのは概略で知った。執事好きの私としては本場英国籍の作家がものしたそれというので読む前から盛り上がっていた、いやいや期待に溺れてはいかん。ページを開いた。のっけから「執事萌え~(>Σ<)」。 しかし読み進むにつれ萌えから真剣モードに移っていった。彼はジーヴスでもバンターでもない。つまりいかに執事として有能であっても「スーパーマン」ではない。それに気付いたとき私を支配したのは憧れからくる「萌え」ではなく深い同情と共感からくる愛おしさであった。
 

4 『航路』
コニー・ウィリス ヴィレッジブックス 【SF】

航路〈上〉 (ヴィレッジブックス)
コニー ウィリス
ソニーマガジンズ
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どうなるどうなるどうなる? というノンストップ・ジェットコースターに乗せられた興奮とそして怒涛の感動をくれた。 魅力たっぷりの愛すべきキャラクターがたくさん出てくるのも推しのひとつです。 素材が「臨死体験」で、私は普通そういうのにうさん臭さを感じてしまうんですけどこれはまあ「お話」ですし、そういう世界なんだーってくらいの気持ちでサイエンス・フィクションならではの魅力にどっぷり浸かるのも実は快感だったり。
 日記より】 この小説ってネタバレ厳禁、なんです。だからここでもいらんことは書かない。アラスジなんてもってのほか! ミステリーだとラストに衝撃がくるけどこれは途中にあるの、小さいのがひとつ、ものすごく大きいのが1つ。後者の方を読んだときには息が詰まって、ちょっと区切りのよいところまで進んでから本を伏せたね……。「なんじゃこりゃ」「えええええ」「こっからどーすんのよ?」。
 

5 『ららら科學の子』
  矢作俊彦 文春文庫 【現代文学】

ららら科學の子
ららら科學の子
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矢作 俊彦
文藝春秋
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期待していた作品だけど、この作家の別の作品で「?」となったこともあってどうかなーと危ぶむ気持ちもあったわけですが。 いやあ、これは。 理屈抜きに面白かったです。 こどもの頃アニメやなんかで楽しく思い描いていた「未来」は美しく快適で機能美にあふれていたけれど、実際21世紀になって「未来」が「今」になってしまった感がある。 さてそこで、世界は美しくなっているだろうか? ――という気持ちになったことがあるひとにはすとーんと落ちてくるものがあるんじゃないかなと。 タイトルも最高に好きです。歌いたくなります。
 日記より】 難しいことはわからない。学生運動に思い入れはないし、まして中国の革命なんぞ昔高校の世界史で何か習ったなぁ……と遠い目になることしかできない。でもこの小説は面白かった。ひょっとして、こういう感想は不謹慎に過ぎるのかも知れないが、率直に云って「格好良かった」のだ。ぞくぞくするくらい。
 

6 『鴨川ホルモー』
 万城目学 産業編集センター 【エンタメ】

鴨川ホルモー
鴨川ホルモー
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万城目 学
産業編集センター
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アホをここまでマジメに書いてくれてありがとう。 この作家のアタマの中はどうなっているんだ? と思うくらいホルモーの描写が楽しかったです。あの踊りのシーンにはもう……脱帽だよ!! 京都が舞台ってのも嬉しいです。 青春学生恋物語としても楽しめます。
 日記より】 帯の裏表紙側に「鬼や式神を使って、大学生が戦争ごっこ」とありますが、「ホルモー」を単純に説明するならまさにそういうことです。 しかし「鬼や式神を使う」ということで陰陽師の世界、神秘的で超自然的なファンタジックな世界を想像して読むとそれはことごとく裏切られます(笑)。
 

7 『猫島ハウスの騒動』 
 若竹七海 カッパ・ノベルス 【コージー・ミステリー】

猫島ハウスの騒動 (カッパ・ノベルス)
若竹 七海
光文社
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もう作家業は引退なさるのかとひそかに危惧していたところにこの作品。 あああ有難うございます~、と感涙にむせんだ。だって葉崎シリーズって私の一番好きな七様が読めるんだもん。 底意地が悪いけどユーモラスもてんこ盛り。 やっぱり七様はこうでなくっちゃ!
日記より】 猫ハーメルンばっしゃーんで「イヨッ、待ってましたっ」と快哉を叫んだのを皮切りに、くしゃみ連続、スーッパーッ・ダースベイダー警部補、ボタン4つ開けアルベルト、エトセトラ、エトセトラ。サービス満点のくすぐり攻撃にあぅあぅと喜びにうちふるえつつ読んでいくこの愉悦は何事にも変えがたいね!
 

8 『中二階』
 ニコルソン・ベイカー 白水Uブックス 【米現代小説】

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ニコルソン ベイカー
白水社
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変な話です。 でもひとつひとつの「モノ」を「言葉」で紡いでいくその連なりがあまりにも素晴らしくて、アラスジでは絶対にわからないひとつの世界を作り出していて、それが退屈にならないのが不思議でしょうがなかった。おまけに最後はなんでかしらんけど感動までしちゃったんだから自分でびっくりしたよ。
日記より】 思ったよりも全然「常識的」な話、奇想天外でもなんでもない、だけど面白いの。変人ですらない。むちゃくちゃ細密な描写なので、文字通り一字一句おろそかにできません、じっくり堪能、うーん、こんなのをよく書くことを思いつき、実行したなあ。デビュー作だというから驚愕するしか、なし。
 

9 『歳月のはしご』
アン・タイラー 文春文庫 【米エンタメ】

歳月のはしご (文春文庫)
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アン タイラー
文藝春秋
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自分の生活、自分の思考にするりとここまで自然に溶け込んでしまうのは何故だろう。全然立場違うのに。体験をしたことがないのに。 今のところ、「別の生活をイチから始めてみる」というシチュエーションが面白かったのでタイラーの中ではこれが一番好きです。そんな「小説らしい設定」がポイントになるなんて私もまだまだ青いなって思いますけどね。
 日記より】 ほぼ終盤になってから本を伏せて階下に下りていったとき、自分の思考にディーリアの主婦思考が混ざってるみたいになっているのに気付いて愕然とした。それだけこの小説の一人称がリアルというか、すんなり私の心の中に入り込んで同化してしまったってことだろう。私は主婦になった経験はないけどね(苦笑)。
 

10 『パンク侍、斬られて候』
 町田康 角川文庫 【純文学】

パンク侍、斬られて候 (角川文庫)
町田 康
角川書店
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なんか新しいんだけど懐かしかったこの作品。 どう転がるんだ? ぐわあそうキたかー! の、繰り返しでした。 こういう前衛的な作品ってともすれば理解し難いというか小難しいというかマイナー向けというか、凄いのはわかるけど面白くはない、というふうにも陥りがちなんですがこれは無理がなくて著者が最後まできちんと伝えてくれる姿勢に徹してくださっていたから楽しかったなぁ。 頭の中で場面場面の絵を想像しながら読んでしまいました。 だから今でもいくつかのシーンが映像で浮かんできます。 凄まじくシュールです。
 日記より】 「腹ふり党」という世にもくだらない冗談としか思えない存在に実にあっけなくノってしまうそこらの人々、そしてそれを利用して己の立身出世に利用しようとする人々。町田康はノリノリで、しかし確実に醒めた怜悧な視線で人間の欲・俗感情をとらえ、お祭り騒ぎにまで昇華させてがんがん飛ばして書いてくれちゃっている。
 

特別賞 『レディ・ジョーカー』
高村薫 毎日新聞社 【現代小説】

レディ・ジョーカー〈上〉
高村 薫
毎日新聞社
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文庫化したわけでもないし、何で今頃読んでるんだ? というのはまあ、どうしてもあるのであえてベストテン圏外の、だけど「次点」に収まるわけがない大傑作だから「特別賞」なのであります。 とりあえず私は義兄が好きだ……義兄と合田の関係が好きだ! くうぅぅぅぅっ、ああ、もう、考えれば考えるほど……萌えるわっっっ!(すみませんこんな腐ったコメントで)。 いや誤解しないで欲しいんですけど「そういうの」がメインな小説では決してないんですよ?
 日記より】 この本が出版されたのは97年で、文庫化を待つ身としてはできるだけネタバレが耳や目に入ってこないように情報をシャットアウトしていたのだがそれでも当時結構な話題書であったからイヤでも「グリコ・森永事件」が下敷きになっているというのは知ってしまっていた。そしてこの本を実際に読んでみて前半はその意識が変わることはなかったのだが終盤に後半、終盤と読んでいくにつれてありゃりゃこれはこれは……、ということになった。
 

特別賞 『比類なきジーヴス』他シリーズ
  P・G・ウッドハウス 国書刊行会 【英エンタメ】

比類なきジーヴス (ウッドハウス・コレクション)
P.G. ウッドハウス
国書刊行会
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どれかひとつを選ぶのが難しいのでひとくくりで。というわけでこの位置に。 英国萌え、執事萌えには必読の書。 でも私は自分が貴族だったとしてもジーヴスには執事になって欲しくないかもしれない……何考えてんだかよくわからんけど確実にジーヴスに有利にコトが運んでいきそうだから。「ごめん私が悪かった!」って言わされそうだから(笑)。
日記より】 若旦那バーティーことバートラム・ウースターにはものすごく惚れっぽいビンゴなる友人がいて、しょっちゅう彼の恋の相談にのるというか無理やり巻き込まれる。それをジーヴスがすぱーんとあざやかに解決する。言ってみれば全部同じパターンなのだけれど、それが面白い。なにが面白いって、ジーヴスの丁寧すぎるほど丁寧な物言いだ。
 

振り返って…

今年はなんだか「萌え」がテーマだったような気がしないでもない。
毎年いい作品にいっぱいめぐり合えるのでどれをベストテンに残すかは嬉しく楽しくそして悩ましい作業となる。最後の決め手は「好き度」だ。あと、順位も4位以下はそのときの気分でけっこう変わる可能性がある。
ランキング外になってしまったが、恩田陸『チョコレート・コスモス』、横山秀夫『クライマーズ・ハイ』、平安寿子『恋はさじ加減』、ジョナサン・キャロル『死者の書』、鷺沢萠『ウェルカム・ホーム!』、豊島ミホ『底辺女子高生』、恒川光太郎『夜市』なんかはかなり良かった。

 三浦しをん『風が強く吹いている』を読んだとき、変な話だけど、「ああ、小説っていうのはこれでいいんだっていうか、むしろこれがいいんだ」と目から鱗が落ちる思いがした。 読んで幸せかどうか、が私の中では結構重要なポイントだ。 あったかくなれるかどうか。
例えば好きな作家の新刊が出て、そのひとは好きだし、巧いことは知っていても、テーマが見るからに苦しくツラそうだったら避けてしまうんだねへたれな私は。誰とは言わないけど東○圭吾とか○野圭吾とか東野○吾とか。彼の近作3作くらい帯とアラスジでひるんで逃げちゃったことをここに告白しておきたい。いやそういうものいいんだけどさ。多分読んだら面白いんだろうけどさ。楽しくはないと思うんだよね。

あと宮部みゆきの現代モノもどんどんツラくなっていって、彼女のはやっぱり気になるしお人柄を信じられるから読むんだけれどこれも読んで「楽しい」というのとはちょっと違うんだよね。いろいろ考えて「どうしてあのキャラはああいうことしちゃうんだろう、防ぐにはどうしたらいいんだろう」とか悩んじゃうみたいな。そういうのも必要だけど。っていうかまったく読みたくないわけでもないし、そういう深刻さを乗り越えてでも読みたい作品ってやっぱりどうしたってあるし。 現にこのページで取り上げた作品が全部この定義に当てはまるかって言われたらそうでもないのもあるし。仮に東野圭○のほんわか和み小説とか出てもキャラじゃなくない? とか戸惑いそうだし。
 随分勝手だな貴様! 結局理屈抜きに感性で選んでるだけだろ? ……そうかもしれない。 こんな私ですみません。