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その年読んだ本のベストテンです。

翌の読書手帖 http://asunaro-books.blogspot.jp/

その年に読んだ本ベストテン

2007に読んだ本ベストテン

1 『停電の夜に』 

ジュンパ・ラヒリ 新潮文庫 【短篇集】

停電の夜に (新潮文庫)
停電の夜に (新潮文庫)
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ジュンパ ラヒリ
新潮社
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(@_@)/ びっくりしました。 今までの私の中の”短篇”というものに対する認識が覆されたという意味で「短篇小説のIT革命やー!」という感じでしょうか(真面目な話なのにすいません)。 イヤ、ここは「短篇小説のルネッサンスやー!」とでも言うべきでしょうか?(意味不明ですいません)。 なんにせよ、「短篇小説の宝石箱やー!」というのは言い得て妙だと思います(もうええっちゅーねん)。
 日記より】 素晴らしかった……。 読み終わって、最後のページを閉じて、心の中でbravo!と呟いてしまった、ああ、しみじみと、良い。 平成12年に新潮クレストブックスで出て15年に文庫入りした本書については書評や「夏100」などでちらちら目にして頭の片隅にずっと引っかかってはいたものの目先の読書にとらわれて今までご縁が無かったもの、先日ふいと店頭にあるのが目に留まってそのまますいと引き寄せられた。 


2 『水辺にて―on the water/off the water』 
 梨木 香歩 筑摩書房 【エッセイ】

水辺にて―on the water/off the water
梨木 香歩
筑摩書房
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(@_@)/ 以前に新聞記事で著者がカヤックをなさると知ったとき、そのイメージのギャップに驚かされました。 しかしそういう無知からくる違和感は本書を読むとあっさりと覆されたのでした。 「らしい」のです。とても。
 日記より】 とにかく言葉が紡いでいく梨木香歩の頭の中、思考回路が面白くて興味深くて、それでいてさらさらと水のように入ってくるというよりはゆっくりゆっくり租借し、もう一度同じパラグラフを読み直し、気に掛かったひとつの単語を浚い直し飲み込む――というふうにさせてしまう何かがこの本にはあって、それでとにかくじっくりと向かい合って少しずつ(一度にがーっとたくさん読む、というふうにはする気にならなかったので)読んでいった。
 

3 『私の話』
  鷺沢 萠 河出書房新社 【私小説】

私の話 (河出文庫)
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鷺沢 萠
河出書房新社
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(@_@)/ これは事実そのまんまを書いた「作文」ではありません。 そのまんまではない、「小説」だからこそ胸に迫るものがあったのです。
 日記より】 第三者として読んでいる身には「なんで、どうして、そこまで容赦なく己を追い詰めていくのか」と思わずにはいられないところまで目を逸らさず切り込んでいくのである。こんなふうに自分を冷徹なまでに分析してしまう、せずにはいられない精神というのはもう本当に、どうしようもなくしんどいのではないか。そしてやはり今はもう彼女はこの世にはいない、という事実をあわせて考えてしまう。ああこんなにまで容赦なくしなくていいのに、と思ってしまう。
 

4 『対岸の彼女』
 角田 光代 文春文庫 【現代小説】

対岸の彼女 (文春文庫)
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角田 光代
文藝春秋
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(@_@)/ この話を読んだ後、とりあえず欲求のおもむくままに台所の換気扇掃除をしました。
 日記より】 ――なのに、すごく「小説的」な立場であるのに、自分とリンクする面なんて状況的にはほとんどないのに、――それでもなお、こんなにも心を強く揺さぶられるのはどうしてなのだろうか。 どうして私は通勤電車の中でこれを読みながら、ともすれば号泣しそうになるのを必死にこらえ、舌先を噛み締めて目をしばたたき、涙を飲み込んで、それでも読むことをやめられなかったのか。
 

5 『ぽろぽろドール』
  豊島 ミホ 幻冬舎 【短篇集】

ぽろぽろドール
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豊島 ミホ
幻冬舎
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(@_@)/ こういう中途半端な気持ち悪さ、異常さ加減が豊島さんの真骨頂だと思うのです。
 日記より】 とーっても綺麗な装丁に包まれた本書には6つのお話が入っているがこれすべていろんなカタチのいろんなひとによる人/形/愛。 正直、読んでいてドン引きというか、気持ち悪いというか、ひえぇええ、わからん、と思うことはいっぱいあった。でも、巧いんである。面白いんである。書かれている世界が素晴らしく完成されていて小説としてむちゃくちゃ美しいのだ。
 

6 『イラクサ』
  アリス・マンロー 新潮クレスト・ブックス 【短篇集】

イラクサ (新潮クレスト・ブックス)
アリス・マンロー
新潮社
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(@_@)/ 小説としては極上です。若輩者に口を差し挟むところなんてまったくありません。でも、……言っても良いですか? アリス・マンローさんて性格悪くね?
 日記より】 幸か不幸か後に書かれた自伝的小説を先に読んでしまったのでついつい背景にある著者自身の経験を想像したり重ねたりしつつ読んでいったのだが、まったくの創作であれなんであれ、アリス・マンローの書く小説というものには深い、しっかりとした存在感がある。幸福に走り過ぎない。かといって不幸だけに浸りきる悲劇のヒロインもいない。 ふっと梯子を外され、ふっと視点を変えられ、すとんと着地しているのを示される。若輩者はただ息を呑むばかりである。
 

7 『犬身』
松浦 理英子 朝日新聞社 【純文学】

犬身
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松浦 理英子
朝日新聞社
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(@_@)/ これはとっても美味なファンタジー、でもお子様には読まれてたまるか、なのでございます。
 日記より】 タイトルからしてそうなんだが読み始めると主人公の名前は八塚房恵だし架空である地名はすべからく犬絡みだし、駄洒落スレスレの言葉遊びがまずわっと押し寄せる。そうやってこっちの脳内をふにゃふにゃにしておいて次にくるのが嗅覚攻めである。主人公とその相棒の描写ははっきり言ってかなり気持ち悪く、一瞬読書放棄しようかと思った。どろりと生暖かい感触をねっとりと書いてある。これは後で考えれば周到に計算された手順である。
 

8 『俳風三麗花』
三田 完 文藝春秋 【大衆小説】

俳風三麗花
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三田 完
文藝春秋
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(@_@)/ いささか親父趣味という欠点はありますがそれを補って余りあるこの愉しさ。 俳句ばんざい。
 日記より】 大学教授の父と一緒に句会に参加していたがその父が急死してしまい、その遺志を継ぐ意もあってますます発句に精進したいところのたおやかなお嬢さん、ちゑ。 句会主催者の教え子で女子医学生、ハイカラで聡明な壽子。 浅草芸者で気風の良い姐御肌、松太郎。 表題どおりの麗しい花たちの涼やかなくるくる変わる表情を追っていくのが実に愉快で、なんだかほんわかして愉しい気持ちになれて、ああ良い小説を読んだなあ、と嬉しくなった。
 

9 『逃亡くそたわけ』
  絲山秋子 中央公論新社 【現代小説】

逃亡くそたわけ
逃亡くそたわけ
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絲山 秋子
中央公論新社
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(@_@)/ 今年まとめて読んだ絲山ワールド。 中でも九州の言葉が心地よく、作品空間の広がりが爽快なこの話は実に鮮やかでした。 「くそたわけ」というのは彼らのことを指しているともとれるけど、彼らがそうせざるを得ない世の中に対するメッセージでもあるような気がします。
 日記より】 ダメ男とダメ女が逃亡するハナシ、というのは読む前から知っていたけれど主人公の喋るときの言葉が良くって九州の風景が珍しくてアタマの中で繰り返される男の声の幻聴「亜麻布二十エレは上衣一着に値する。」のリフレインが不気味で、特に大きな何かがあるわけではないのだけれど彼らのちょっとマの抜けた珍道中にはらはらしながら付き合うことはなかなかに楽しいことだった。
 

10 『おどりば金魚』
野中 ともそ 集英社 【連作短篇集】

おどりば金魚
おどりば金魚
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野中 ともそ
集英社
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(@_@)/ 狭い「おどりば」から大陸の草原の広がりを感じます。風が吹いているのです。 そしてそれは、あたたかい。
 日記より】 このアパートにはエレベータが付いていないが、それが重要なところで、この連作短篇集の肝でもある。だって物語のいくつかは踊り場で起こるのだから。 1つのお話を読み終えると深シンと胸に降りてくる何かがあって、しばらくそのまま動かずに最後のページを眺める、あるいはいったん本を閉じてしばらく目を閉じる。すぐ次の世界に旅立つにはまだ早く、もう少し今の物語の余韻を噛み締めたり、心の中が波打つのを鎮めたい。
 

特別賞 『おおきく振りかぶって』1~9巻;以下続刊
  ひぐち アサ 講談社 【漫画】

(@_@)/ ああああなんて面白いんだちくしょうオマエらみんな大好きだ!!!! という感じです。 高校野球漫画なんだけど、基本的に人間模様漫画なんだと思います。悩み、迷い、不器用ながらも一生懸命な彼らの言動にははっとさせられたりパワーをもらったり。何度読んでも笑っちゃうシーンもあれば、何度読んでも涙を堪えきれないシーンもあります。 人間観察の深さには本当に勉強させてもらうことが多いです。
 【日記より】 ナインひとりひとりにいろんなのがいて、普通の高校生で、毎日をごく平凡に暮らしている。野球は好き、だけど熱血ってわけじゃない。 「高校生は、キ、キ、キラッキラしている……。 この気持ちを ずっと忘れずに 描いていきたいと思います。」 著者・ひぐちアサさんのこのコメントがほんとに見事にこの漫画の核心にあります。
 

振り返って…

 今年は女性作家率高いなー……。
いや全然無意識です。好きな本、引き寄せられる本をいつもどおり読んでいって、年末にベスト候補挙げて、削っていったら残ったのがこうでした。 順序は例によってほとんど関係ありません。便宜上付けているだけです。

 「今年読んだなー」という感じなのは絲山秋子と鷺沢萠でしょうか、鷺沢さんは生前に『過ぐる川、烟る橋』を単行本で読んでるんですけれど('99年ですかね)、自分的にブレイクしたのは去年読んだ『ウェルカム・ホーム!』だったので。そういうことってありますよね。めぐりあわせといいますか。
めぐりあわせで今頃ブレイクしたといえば1位に据えたジュンパ・ラヒリさんもそうです。今年文庫化された『その名にちなんで』も良かったのでどちらを挙げようかとけっこう迷いましたがやはり「三度目で最後の大陸」の衝撃は譲れないなと。 それにしてもなんで○麿呂のノリになっちゃったんだろう……、いや、ああでもないこうでもないと真面目なコメントを書いているうちに箍が外れてしまって……ああもういいやこのノリでいっちゃえーみたいな……。 申し訳ございません。

あとアリス・マンローさんの性格に対するコメントは、つまりはそういう「ぎょっ」とさせられるような思考を小説に書いちゃってそれでものすごい味の、深みのある逸品に仕上げてしまう作家としての力量にただただ感服仕っている、ということをお茶らけて書くとああなってしまったわけです。すいません、圧倒的に説明不足なのは重々承知しております。要は、聖人君子じゃないからこそ面白いんですよっていうね。

 ベストには入れませんでしたがジョナサン・キャロルの新作『天使の牙から』や辻村深月『冷たい校舎の時は止まる』には特に「小説ならでは、フィクションならでは」の愉悦を堪能させてもらいました。今年はミステリーをあまり読まなかったですね。 このベストテンを〆たのは12月10日過ぎでした。以降はまた来年の候補です。
 さぁて、来年はどんな傾向になっていることやら。