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その年読んだ本のベストテンです。

翌の読書手帖 http://asunaro-books.blogspot.jp/

その年に読んだ本ベストテン

2012に読んだ本ベストテン

1,佐渡の三人
長嶋有
 
佐渡の三人
佐渡の三人
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長嶋 有
講談社
売り上げランキング: 13890
日記より】 長嶋有の小説はスジじゃないんだ。一言一句、表現されるそのシーン、台詞、描写によって場の空気が構築されている、その全体が、めちゃくちゃ面白いのだ。 最初の話だけではあえて書かれていなかったことも全編読むと出てきたりするが、なんにせよちょっと毛色の変わった一族だなあと思う。そしてなんだか登場人物一覧を作りたくなってくる。今回珍しくいろんなひとが出てくるからだ。他の作品からの繋がりもあるし、「どれどれ、どうなってんだこの家族」と身を乗り出す感じ。


 2,最果てアーケード
小川洋子
 
最果てアーケード
最果てアーケード
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小川 洋子
講談社
売り上げランキング: 1039
日記より】 アーケードというのはどこか懐かしい響きをもつ言葉だ。いまもあるけれど、「流行の最先端」ではない、昔なじみの、地元密着、という感じ。「物」に対する執着やひたむきな想いを表現することで独特の世界を描き出す著者にはぴったりの設定ではないか。 実際読んでみると、やっぱり設定云々も好きだけど、この作家の文章は一言一句が丁寧で、しっとりと馴染む湿気があって、紡ぎ出される空気がとっても素敵で心地よいなあ~とじっくり堪能した。


3,ピエタ
大島真寿美
 
ピエタ
ピエタ
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大島真寿美
ポプラ社
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日記より】 冒頭部分を読んで、孤児院のかつて孤児だった女性が主人公、と知った時点で瞬間的にばーっと想像したのは、『小公女』のような悲劇だった。つらい境遇に生まれた女の子が、孤児院の教師やいじわるな同級生からいじめられたりしつつも健気に生き抜く……。 だがすぐに、本当にすぐに、どうやらこれはそういう話ではない、ことに気付かされる。まず、穏やかなのだ。主人公たちのまとっている空気や場のそれが。


4,ウはウミウシのウ
宮田珠己
 
ウはウミウシのウ―シュノーケル偏愛旅行記 (白水uブックス)
宮田 珠己
白水社
売り上げランキング: 298296
日記より】 ウミウシとか変なカタチの海の生き物が好きで、じっくり観察したいという著者が世界のあちこちの海でシュノーケリングし、そこで見たことをご自身のイラスト付きで書いてある、ただし難しいことや勉強になることはいっさい抜きで、というのがこの本だ。


 5,焼き餃子と名画座
平松洋子
 
焼き餃子と名画座: わたしの東京 味歩き (新潮文庫)
平松 洋子
新潮社 (2012-09-28)
売り上げランキング: 9258
日記より】 あー、これは平松さんのミシュランだな、と読んでいて思った。 決して高級店では無い。老舗ばかりとかでもない。 昔からある、ほんとうに美味しいものを知っているお客が集まる場所。 東京にはお店がいっぱいあるなあ、としみじみ感じた。


 6,幽霊の2/3
ヘレン・マクロイ
 
幽霊の2/3 (創元推理文庫)
幽霊の2/3 (創元推理文庫)
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ヘレン・マクロイ
東京創元社
売り上げランキング: 105443
日記より】 タイトルが変わっていて、「なんでミステリに幽霊が出てくるんだろう。しかもそれが3分の2、ってどういう意味だろう」と思っていたが、このお話の中にそういうゲームをするシーンがあって、ああそうかと思った。そして、その後徐々に明らかになっていく真相によって、この印象深いタイトルに含まれた本当の意味もわかっていき、驚きとともに「なんて良く考えられたタイトルなんだ!」と感動するのだった。


 7,舟を編む
 三浦しをん
 
舟を編む
舟を編む
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三浦 しをん
光文社
売り上げランキング: 1
日記より】 もともと、このひとは語彙が豊富でそれでいて難解さのない非常に読みやすい美しい文章を綴ることでは若手の作家のなかで群を抜いていると思っていたが、その特徴は健在。 辞書作り、という一見地味でマニアックな題材にも肩肘張らずに取り組み、ユニークで個性的な登場人物が織りなすおっとりしたあたたかい雰囲気でお話全体を美しく優しく仕上げている。 惜しむらくは、この本の薄さ。辞書編纂を描いた小説ならばもっとエピソードを入れて長くすることはいくらでも可能であったろう、こんなに面白いんだからもっと読んでいたかったし、装丁的にも分厚いほうがよりリアルに辞書っぽくなっただろうに。


 8,第2図書係補佐
又吉直樹
 
第2図書係補佐 (幻冬舎よしもと文庫)
又吉 直樹
幻冬舎
売り上げランキング: 448
日記より】 想像していたような読書案内ではなくて、ある作品を基に掘りおこされた記憶や触発されたりして考えたことを丁寧に綴った「又吉さんの」エッセイ集だった。 読書が趣味のひとつではなく、読書が思考の畝の中に複雑に絡みこんでいるような、実体験と読書で得たものが混ざり合って人格が成されたというタイプがいる。時と場合によっては本しかすがるものが無い、そういう精神状態に追い込まれることがある。読書は「娯楽」「教養」でもあるのだがあらゆる意味で「支え」なのだ。世間一般からは健全とされないような気がするがしょうがないのである。 わたしはそういう人間であり、又吉さんもまた、そうなのであると知った。


 9,凍りのくじら
辻村深月
 
凍りのくじら (講談社文庫)
辻村 深月
講談社
売り上げランキング: 3877
日記より】 共感はしにくいし、変なひとが出てくるし、でもものすごく面白くて、ぐいぐい引き寄せられる不思議な世界があって、しかもなんだかこちらの精神状態にけっこうダイレクトに響いてくる巧さがあって、息を詰めるようにして読んだ。どうなるんだこの話、と読まずにはいられなかった。 理帆子が自分はひとりじゃないと気付けて良かった。彼女を包む大きな大きな存在と、周りのひとの優しさを知ることができてよかった。


10,エストニア紀行 森の苔・庭の木漏れ日・海の葦
梨木香歩
 
エストニア紀行: ――森の苔・庭の木漏れ日・海の葦
梨木 香歩
新潮社
売り上げランキング: 2888
日記より】 植物にも動物にもずっと親しい好奇心と愛情を持っている著者だけどヒトが住む場所と彼らはなかなか共存できない。人間がいかに多くの種を絶滅に追いやったかということが繰り返し梨木さんの絶望的な実感として語られる。そして、そんななかコウノトリは珍しく人里に棲む鳥で、その姿をせめてもの救いのように追い求めてしまったのだと、そんな心境を吐露しておられる。


特賞 なれる!SE 2週間でわかるSE入門
夏海公司
 
なれる!SE―2週間でわかる?SE入門 (電撃文庫)
夏海 公司
アスキーメディアワークス
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日記より】 主人公はいきなりとんでもない仕事環境に放り込まれたのが憐れだが、失敗続きで自信を失ったり呆然としたり怒ったりしつつもきちんとまともに取り組んでいく、でも決して真面目一色でも仕事人間でもなく「どこにでもいそうな普通の若い青年」なところがイイ。 これから社会人になるひと、新人さんはもちろん、その先輩や上司的な立場の人間にもいろいろ勉強になることがあると思う。あと、なんかアドレナリン出るというか、モチベーション上がることが翌日出勤してわかった。働けるってしあわせだ。


別格;読むのが怖い!Z 日本一わがままなブックガイド
北上次郎・大森望
 
読むのが怖い!Z―日本一わがままなブックガイド
北上 次郎 大森 望
ロッキングオン
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日記より】 ご本人たちは大真面目なので、「漫才」と言われると心外みたいだけど(北上氏の巻末コメント参照)、いやー、真面目だから面白いんだよね。読んでいると自然に笑っちゃう。おふたりのキャラクターは「本の雑誌」とかでひしひしと感じ取っているから、その信頼感と不信感(笑)のバランスとかね。北上氏ががんがん本音で攻めてる一方でそこはそれ、オトナの気配りというかいろいろあって理性的な発言を表面上は貫く大森氏の図とか。お、面白すぎる……。


総まとめε(*´・∀・`)з゙

今年のベストを選ぶのはけっこう難しかったです。
 今年読んだ初読みは約90作品あり、それをベスト20に絞るまでは割と簡単でしたがそこからだいぶ迷いました。 苦し紛れに「特賞」と「別格」を作ったりして。
 1位は長嶋有だというのは「もうこれはね、」という感じでスッと決まりましたが、いちおう1作家1作品ルールを自分で作っているのでねたあとにとどっちを上げるか少し考えました。結局、単純に、読んだのが比較的近いため新鮮な感動があったこちらになりましたが。 本当に、ここ最近の長嶋有は面白すぎて、どうしましょうという感じです。
 『最果て』はシチュエーションと作風がぴったりで良かったし、『ピエタ』は舞台の大きさ、ドラマチックさが素晴らしかった。このひともゼラニウムの庭とどっちにしようかと考えましたがスケールの大きさ、物語としての完成度の高さは『ピエタ』かな? と。 『幽霊の』は久しぶりにミステリを読み、ミステリって良いなあ!としみじみ出来たので。 『舟を編む』は長さがあの倍あって、視点がずっと馬締さんだったらベスト3に入っていたはずです。めちゃめちゃ面白かっただけに、短すぎてほんっと残念でした。 『凍りのくじら』はけっこうクセのあるハナシなので、途中で挫折されるかたもおられるかもしれませんが、最後まで読むことでむくわれる感じなので、最後まで読めそうもない場合はさっさと見切りをつけたほうが精神衛生上良いかも。

 毎回のことだけれども、3位以下の順位は便宜上つけているに過ぎず、あまり意味はありません。 読むひとの趣味とかコンディションによって、全然違うと思います。 このあいだBSジャパンという番組をたまたまつけたら北上さんと大森さんが出演してらして、狂喜しましたがもうほぼ終盤でした(涙)。ベスト10位を下位から上げていたのの、3位のところからです。でもおふたりのトークが本で読むのとまったく同じ空気感だったので笑ってしまいました。 なにはともあれ、今年も素敵な作品にたくさん出会えて、しあわせでした。 ありがとうございましたm(_ _)m